コンディショニング

メンタルが8割を決める 試合前の緊張を力に変える呼吸法

試合前、選手が一人で深呼吸している理由 試合開始30分前、ベンチ裏で一人深呼吸を繰り返している選手を見たことはないでしょうか。 練習では打てるのに、試合になると…

4分で読める出典 1件BARREL編集部

この記事の要点

  • 試合前、選手が一人で深呼吸している理由
  • 実力を発揮するには「2つのメントレ」が必要
  • トップアスリートにも有効とされる呼吸法トレーニング
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試合前、選手が一人で深呼吸している理由

試合開始30分前、ベンチ裏で一人深呼吸を繰り返している選手を見たことはないでしょうか。

練習では打てるのに、試合になると体が固まる。ピッチャーなら、マウンドに上がった瞬間に呼吸が浅くなる。こうした場面は、どのチームでも起きています。

メンタルトレーニングの専門家は一般に、「どれだけ力をつけたとしても、ここ一番でその力を発揮できなければ、宝の持ち腐れになる」と説明します。

つまり、技術を磨くだけでは足りない。本番で実力を出し切るための準備が、もう一つ必要なのです。

実力を発揮するには「2つのメントレ」が必要

メンタルトレーニングには、大きく2つの段階があるとされています。

一つ目は「実力をつけていくためのメントレ」。これは日々の練習で集中力を高め、技術を着実に積み上げるための土台です。

二つ目は「本番で実力を発揮するためのメントレ」。これが試合前の緊張や不安を力に変える部分です。

どちらか一方だけでは不十分です。練習で力をつけても、試合で出せなければ意味がない。逆に、試合でリラックスできても、そもそもの実力がなければ結果は出ません。

この2つを両輪で回していくことが、選手の成長につながります。

トップアスリートにも有効とされる呼吸法トレーニング

では、本番で実力を発揮するために、具体的に何をすればいいのか。

笹塲育子・佐久間春夫(2014)の研究「トップアスリートを対象とした心理サポートにおける呼吸法習得時の即時バイオフィードバックの有効性」(日本バイオフィードバック学会誌)では、日本代表選手を対象に呼吸法のバイオフィードバックトレーニングを実施した事例が報告されています。

この研究では、呼吸法トレーニングが本番前の心理コントロールに有効であることが示されています。つまり、呼吸に意識を向けることで、選手が競技場面においてセルフコントロールスキルを発揮しやすくなる可能性が報告されているのです。

呼吸法は、特別な道具も場所も必要ありません。試合前のベンチ裏でも、移動のバスの中でも、いつでもどこでも実践できます。

不安の正体を見つけることから始める

試合前に不安を感じるのは、決して悪いことではありません。問題は、その不安の原因がわからないまま、モヤモヤしている状態です。

メンタルトレーニングの考え方では、不安の原因を特定することが第一歩とされています。原因がわかれば対処法も見えてくる、という点は、医療における診断と治療の関係に例えられることがあります。病名がわかれば治療の方針が立てられるように、不安の原因がわかれば、練習や準備で何を補えばいいかが明確になるのです。

選手が「試合で打てない」と悩んでいるなら、まず原因を一緒に探すことです。

タイミングが合っていないのか。構えが崩れているのか。それとも、相手ピッチャーの配球を読めていないのか。

原因がわかれば、練習で何を修正すればいいかが見えてきます。そして、修正のための練習を積めば、試合前の不安は自然と減っていきます。

「やるべきことはやった」という感覚が、選手の心を支えるのです。

明日の練習で試せる呼吸法の基本

では、具体的にどんな呼吸法を取り入れればいいのか。

基本は「4秒吸って、6秒吐く」です。

鼻からゆっくり4秒かけて息を吸い、口からゆっくり6秒かけて吐く。これを5回繰り返すことを習慣にしてみてください。

試合前のアップ中に、選手に声をかけてみてください。「深呼吸を5回やってみろ」と。

最初は効果を実感できないかもしれません。でも、毎日の練習後に5分だけでも続けていくと、試合前に自分で呼吸を整えられるようになります。

ポイントは、吐く時間を吸う時間より長くすることです。吐く息に意識を向けることで、副交感神経が働き、体がリラックスモードに切り替わりやすくなるとされています。

※ここからは編集部による推定・示唆です。毎日継続することで呼吸のコントロールが習慣化し、緊張場面でも自然に使えるスキルとして定着する可能性があります。ただし個人差があるため、効果の感じ方は選手によって異なります。

実力をつける過程でメンタルも育つ

スポーツのメンタルトレーニングにおいては、「基礎に立ち返ること」の重要性がしばしば指摘されます。試合で結果が出ないとき、すぐに「メンタルが弱い」と決めつけるのではなく、基礎技術に戻ってみることが有効な場合があります。

スイングの軌道、ステップの位置、グラブの出し方。基礎を丁寧に積み上げる過程で、選手は「自分はやるべきことをやっている」という自信を得ます。その自信が、試合前の不安を和らげるのです。

メンタルは、技術と切り離されたものではありません。実力をつける過程そのものが、メンタルを育てていくのです。

明日から試せる一つのこと

試合前のアップ中に、選手に「4秒吸って、6秒吐く呼吸を5回やってみろ」と声をかけてみてください。

最初は照れくさがるかもしれません。でも、毎日続けていくうちに、選手は自分で呼吸を整える習慣を身につけていきます。

メンタルトレーニングは、特別なことではありません。日々の練習の中で、少しずつ積み重ねていくものです。

明日のグラウンドで試せる一つのことを持ち帰ってもらえれば、それで十分です。

参考文献

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