成長期の膝の痛み 無理をすると後遺症が残る理由

練習後、選手が膝を押さえて歩いていました
練習が終わった後、一人の選手が膝の下を押さえながらグラウンドを歩いていました。「大丈夫か」と声をかけると、「ちょっと痛いだけです」と答えます。翌日も、その翌日も、同じように膝を気にしている様子が見られました。
成長期の選手が訴える膝の痛みは、単なる筋肉痛とは違います。放っておくと骨が変形して後遺症が残る可能性があるからです。この記事では、成長期特有の膝の痛みがなぜ起こるのか、そして痛みが出たときにどう対応すればよいかを、現場で使える形でお伝えします。
成長期の膝は「骨がまだ柔らかい」から痛む
成長期の選手の体は、大人とは違う構造をしています。特に膝の下の骨(脛骨粗面)は、まだ完全に硬くなっておらず、軟骨の状態です。この柔らかい部分に、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が繰り返し引っ張る力を加えると、骨に炎症が起こります。これがオスグッド・シュラッター病と呼ばれる障害です。
高知県スポーツドクター協議会の調査では、スポーツ障害で膝の障害が全体の約14%を占めており、昔の膝のケガが原因で現在も困っている人の割合は約32%に上ります。つまり、成長期の膝の痛みを放置すると、将来にわたって影響が残る可能性があるということです。
関東労災病院のデータでは、スポーツ損傷患者約7万人のうち、膝に関する障害が上位を占めています。オスグッド病も含め、膝内障、前十字靱帯損傷、半月板損傷など、膝の障害はスポーツ現場で最も多く見られる障害の一つです。
オスグッドは「我慢して続けると骨が変形する」
オスグッドの主な症状は、膝下の骨が押すと痛む、走る・ジャンプする・しゃがむなどの動作で痛みが増す、運動を休むと和らぎ再開すると再び痛む、といったものです。特徴的なのは、膝下の骨が硬いこぶのように出っ張ってくることです。
この痛みは成長期が終わると自然に治ることがほとんどです。しかし、痛みを我慢してスポーツを続けると、骨が変形して後遺症が残る可能性があります。「試合が近いから」「レギュラーを外されたくないから」という理由で無理を続けた結果、骨の出っ張りが大きくなり、大人になっても正座ができない、膝をつくと痛むといった状態が残ることがあるのです。
オスグッドが起こる原因は、成長期の骨の成長と筋肉の柔軟性のアンバランスにあります。ジャンプ、ダッシュ、キックなどの動作による負担が、まだ柔らかい膝下の骨に繰り返し加わることで発症します。サッカーやバスケットボールなど、ジャンプやキックを繰り返すスポーツで発症しやすいのはこのためです。
かかとの痛みも同じ仕組みで起こる
成長期には、膝だけでなくかかとにも同様の痛みが出ることがあります。シーバー病(踵骨骨端症)と呼ばれる障害で、特に10歳前後の男児に多く見られます。
かかとの骨の先端にある成長軟骨が、アキレス腱や足裏の筋肉に引っ張られることで炎症が起こります。主な症状は、かかとの軽い腫れ、圧痛、歩行時の痛みで、ひどい場合はつま先歩きになることもあります。朝起きてすぐに足を引きずるような動きが見られたら、シーバー病の可能性があります。
偏平足や内反足、外反足などの足の形状も、シーバー病の発症に関係しています。足の形によってかかとへの負担のかかり方が変わるためです。
痛みが出たときの対応は「まず休ませる」
成長期の膝やかかとの痛みに対する基本的な対応は、まず運動を休むことです。痛みが強い場合は一時的にスポーツを休止することが重要です。「休んだら試合に出られない」という選手の気持ちは分かりますが、無理をして骨が変形してしまえば、将来的にスポーツを続けることすら難しくなります。
運動制限と並行して、太ももの前の筋肉を伸ばすストレッチが効果的です。筋肉が硬いと骨への引っ張る力が強くなるため、柔軟性を高めることで負担を減らせます。運動後などに患部を冷やすアイシングも有効です。
痛みが強い場合は医師の判断で消炎鎮痛剤が使用されることもありますが、基本は安静とストレッチです。超音波や低周波などの物理療法が用いられることもあります。
予防のためにできること
成長期の障害を予防するために、日頃からできることがあります。
まず、正しい姿勢と動作を身につけることです。猫背にならないよう良い姿勢を意識する、重い物を持ち上げるときは膝を曲げるなど、体に負担のかからない方法で動くことが大切です。
次に、こまめな休憩とストレッチです。長時間同じ姿勢を続けず、適度に体を動かし、特に太ももの前の筋肉を伸ばすストレッチを習慣にします。
そして、適度なトレーニングです。オーバートレーニングを避け、体の状態に合わせて運動強度を調整することが重要です。「みんなと同じメニューをこなさなければ」と無理をさせるのではなく、痛みが出たら休む、痛みが引いたら徐々に戻す、という柔軟な対応が選手の将来を守ります。
明日のグラウンドでできること
成長期の膝やかかとの痛みは、選手が「大丈夫です」と言っても見逃さないことが大切です。練習後に選手の様子を観察し、膝の下やかかとを押さえている選手がいたら声をかけてみてください。
痛みが出ている選手には、まず休ませること。そして保護者に状況を伝え、必要であれば医療機関の受診を勧めることです。「試合が近いから」という理由で無理をさせると、後遺症が残る可能性があることを、選手にも保護者にも伝える必要があります。
成長期の体は、まだ完成していません。骨が柔らかい時期だからこそ、痛みが出たときの対応が将来を左右します。明日のグラウンドで、膝を押さえている選手を見かけたら、まず休ませることから始めてみてください。それが選手の将来を守る最初の一歩です。