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メンタルが8割を決める 試合前の緊張を力に変える呼吸法

試合前、選手が一人で深呼吸している理由

試合開始30分前、ベンチ裏で一人深呼吸を繰り返している選手を見たことはないでしょうか。

練習では打てるのに、試合になると体が固まる。ピッチャーなら、マウンドに上がった瞬間に呼吸が浅くなる。こうした場面は、どのチームでも起きています。

メンタルトレーナーの高畑好秀さんは「受験もスポーツも同じです。どれだけ力をつけたとしても、ここ一番でその力を発揮できなければ、宝の持ち腐れになります」と語っています。

つまり、技術を磨くだけでは足りない。本番で実力を出し切るための準備が、もう一つ必要なのです。

実力を発揮するには「2つのメントレ」が必要

高畑さんは、メンタルトレーニングには2つの段階があると説明しています。

一つ目は「実力をつけていくためのメントレ」。これは日々の練習で集中力を高め、技術を着実に積み上げるための土台です。

二つ目は「本番で実力を発揮するためのメントレ」。これが試合前の緊張や不安を力に変える部分です。

どちらか一方だけでは不十分です。練習で力をつけても、試合で出せなければ意味がない。逆に、試合でリラックスできても、そもそもの実力がなければ結果は出ません。

この2つを両輪で回していくことが、選手の成長につながります。

オリンピック選手も実践する呼吸法トレーニング

では、本番で実力を発揮するために、具体的に何をすればいいのか。

日本バイオフィードバック学会の研究では、オリンピック代表選手を対象に、20日間の呼吸法トレーニングを実施した事例が報告されています。

このトレーニングでは、実験室での練習を経て、実際の競技場面でどう機能するかを検証しました。結果、呼吸数が減少し、パフォーマンス直前の適切な集中状態をつくりあげるセルフコントロールスキルとして機能したことが示されています。

注目すべきは、選手の主観的な報告と、呼吸数などの生理的指標が一致していた点です。つまり、「落ち着いた」という感覚が、実際に体の反応として現れていたのです。

呼吸法は、特別な道具も場所も必要ありません。試合前のベンチ裏でも、移動のバスの中でも、いつでもどこでも実践できます。

不安の正体を見つけることから始める

試合前に不安を感じるのは、決して悪いことではありません。問題は、その不安の原因がわからないまま、モヤモヤしている状態です。

高畑さんは「何かの病気にかかってしまった時に、体調が悪いのに原因がわからないと心配ですよね。でも、病名がわかれば、どんな薬を飲んで、どんな治療をすればいいかわかりますし、気持ちも落ち着くはずです」と例えています。

選手が「試合で打てない」と悩んでいるなら、まず原因を一緒に探すことです。

タイミングが合っていないのか。構えが崩れているのか。それとも、相手ピッチャーの配球を読めていないのか。

原因がわかれば、練習で何を修正すればいいかが見えてきます。そして、修正のための練習を積めば、試合前の不安は自然と減っていきます。

「やるべきことはやった」という感覚が、選手の心を支えるのです。

明日の練習で試せる呼吸法の基本

では、具体的にどんな呼吸法を取り入れればいいのか。

基本は「4秒吸って、6秒吐く」です。

鼻からゆっくり4秒かけて息を吸い、口からゆっくり6秒かけて吐く。これを5回繰り返すだけで、呼吸数が落ち着き、体の緊張がほぐれていきます。

試合前のアップ中に、選手に声をかけてみてください。「深呼吸を5回やってみろ」と。

最初は効果を実感できないかもしれません。でも、毎日の練習後に5分だけでも続けていくと、試合前に自分で呼吸を整えられるようになります。

ポイントは、吐く時間を吸う時間より長くすることです。吐く息に意識を向けることで、副交感神経が働き、体がリラックスモードに切り替わります。

実力をつける過程でメンタルも育つ

高畑さんは2浪の末、早稲田大学に合格しました。その経験から「原因と過程に向き合い、合格を勝ち取った経験は、その後のメンタルトレーナーとしての活動にずっと生きています」と振り返っています。

2浪目に彼がやったことは、中学の勉強からやり直すことでした。「急がば回れ」で基礎を積み重ねた結果、着実に力がついたのです。

これは野球も同じです。

試合で結果が出ないとき、すぐに「メンタルが弱い」と決めつけるのではなく、基礎技術に戻ってみる。スイングの軌道、ステップの位置、グラブの出し方。

基礎を丁寧に積み上げる過程で、選手は「自分はやるべきことをやっている」という自信を得ます。その自信が、試合前の不安を和らげるのです。

メンタルは、技術と切り離されたものではありません。実力をつける過程そのものが、メンタルを育てていくのです。

明日から試せる一つのこと

試合前のアップ中に、選手に「4秒吸って、6秒吐く呼吸を5回やってみろ」と声をかけてみてください。

最初は照れくさがるかもしれません。でも、毎日続けていくうちに、選手は自分で呼吸を整える習慣を身につけていきます。

メンタルトレーニングは、特別なことではありません。日々の練習の中で、少しずつ積み重ねていくものです。

明日のグラウンドで試せる一つのことを持ち帰ってもらえれば、それで十分です。