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部活の用具費は自作より共有で下げる 所有から共有へ

スポーツ用具費の高騰と社会経済的格差が参加機会を阻む構造問題を、2024年のHögman研究を起点に検討。自作器具という個人の工夫より、器具の共有・貸借という制度的アプローチを提案する。

4分で読める出典 2件BARREL編集部
「器具を買えば強くなる」は間違いだった――目的の共有なき器具は初週だけ使われ倉庫に眠る

この記事の要点

  • コストの壁は「個人の工夫」で乗り越えるものではない
  • Högmanらが示した方向性:「所有」から「共有」へ
  • スポーツ科学研究と現場の間にある「認識のずれ」
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廃材のパイプに砂を詰めてダンベル代わりにする、ペットボトルにセメントを流し込んでウェイトにする——。予算の乏しい部活動でこうした光景を見たことがあるだろう。指導者の工夫と熱意の象徴として語られることも多い。その努力が問題の核心に届いているか、研究が示す実態を見てみよう。

コストの壁は「個人の工夫」で乗り越えるものではない

2024年、Högmanらは「スポーツ・レジャー用具の無料貸し出しプログラムの実施」に関する研究をPubMed Centralに発表した(PMC11232254)。同論文が出発点に置く問題認識は明確だ——「スポーツ用具費の高騰と社会経済的格差の組み合わせが、子どもたちのスポーツ参加を妨げている」という指摘である。同研究は9件の論文に引用されている。

「自作で乗り切る」という発想は、コストという壁を個人の努力で突破しようとするものだ。しかし同研究が出発点として示すのは、社会経済的格差に起因する構造的な問題であるという現実だ。個人の工夫に解決を委ねる文化は、問題の本質を見えにくくしてしまう。

Högmanらが示した方向性:「所有」から「共有」へ

Högmanらが研究した解決策は、用具の「無料貸し出しプログラム」という仕組みだった。個人やチームが器具を購入・所有するのではなく、地域や団体間で共有することで参加の壁を下げるアプローチだ。この方向性を部活動の文脈に置き換えれば、近隣校との器具の相互貸借や、地域の体育協会・公共施設からの借用が対応する実践となる。

自作器具は「所有コストをゼロに近づける」工夫であるのに対し、Högmanらの研究が示す発想は「そもそも所有しない」ことにある。自校・地域に存在する器具の共有可能性を探ること——これが研究の示す方向性と一致したアプローチだ。プログラムの実施によって参加機会がどの程度改善されたかについては、有効性が示唆される段階にあり、詳細は本論文を参照されたい。

スポーツ科学研究と現場の間にある「認識のずれ」

Hoareらは、オーストラリアの大学・スポーツ研究機関における725本のスポーツ科学研究を分析した。その知見として、研究参加者はエリートまたはサブエリートアスリートが中心であり、エリートコーチが競技パフォーマンスを最優先するのに対し、スポーツ科学研究者は知見の蓄積を目的とするという認識のずれも指摘されている。

このことは、エリート環境で有効性が示された器具・方法と、予算制約下の現場向けの知見は、必ずしも同じではない可能性を示唆している。エリート環境の手法を、予算ゼロの現場にそのまま自作器具で再現しようとすることには、そもそも限界がある。

今日から動ける選択肢

※ここからは編集部の推定・示唆です。

予算がほぼゼロの状況では、安全性が確保でき、かつ即座に導入できる自重トレーニングが現実的な出発点になる。プッシュアップ・スクワット・ランジ・プランクは器具コストがかからず、基礎的な筋力と動作パターンの習得に活用できる。器具を導入する際は「優先度の高い1〜2種類に絞り、品質が保証された本物を揃える」ほうが、安全性の担保されない自作器具を多数揃えるより合理的と考えられる。いずれの場合も、まず近隣校・地域施設との器具共有の可能性を探ることが、Högmanらの示す方向性と一致する最初の一手だ。

部活動の器具問題を「個人の美談」で終わらせるな

廃材で器具を作る指導者の姿には、確かな熱意がある。しかしHögmanらが示したように、用具費の壁は社会経済的格差と直結した構造的な問題だ。その解決を個人の奉仕と創意工夫に委ねる文化を続けることは、課題を見えにくくするだけでなく、次世代の指導者にも同じ負担を引き継がせることになる。器具を自作する前に、制度として共有・借用できる仕組みをつくる声を上げること——地域レベルでの器具共有の仕組みが一校の参加機会をどれだけ変えられるかを問うことが、変化の糸口になる。スポーツ用具費の問題は、部活動の予算論にとどまらず、すべての子どもが等しくスポーツに参加できる社会をどう設計するかという問いでもある。

参考文献

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