9競技・4,451人を対象にした調査で、参加者の44%がキャプテンをいずれのリーダーシップ役割においても最良のリーダーとみなしていなかった。「キャプテンひとりにリーダーを一任する」構造を見直し、全員がリーダーシップを担うシェアド・リーダーシップへの転換が、チームの機能とパフォーマンス向上に関連すると報告されている。
「ひとりで引っ張れ」という構造の重さ
新チームが始動するたびに、キャプテンに選ばれた選手が同じ悩みを口にする。「何をすればいいかわからない」「監督と選手の板挟みでしんどい」。この苦しさは、その選手の能力の問題ではなく、「チームのリーダーはキャプテンひとり」という設計そのものに起因していることが、複数の研究から見えてきている。
参加者の44%が「キャプテン=最良のリーダー」と思っていない
Fransen et al.(2014)が9競技・4,451人の選手とコーチを対象に行った大規模調査では、参加者の44%が、フィールド内外のいずれのリーダーシップ役割においても、キャプテンをチームで最良のリーダーとはみなしていなかった(出典)。半数近くのチームメンバーが「キャプテン以外に、より適した人物がいる」と感じているという実態だ。
同研究はリーダーシップを「フィールド内のタスク型」「フィールド内のソーシャル型」「フィールド外のタスク型」「フィールド外のソーシャル型」の4役割に分類している。戦術指示から精神的サポート、チーム外での結束管理まで、これだけ広い役割をひとりで担いきるのは、構造的に難しい。
「全員がリーダー」はすでにグラウンドで起きている
Duguay et al.(2019)が4つのサッカーチームをソーシャルネットワーク手法で分析したところ、すべての選手が少なくとも1人の味方から「自分にリーダーシップを与えてくれる存在」として認識されていたことが明らかになった(出典)。公式なキャプテン以外にも、リーダーシップはすでにチームの中で機能している。
TMG Athleticsが紹介するFransen et al.(2019)の調査では、選手やコーチが「理想のリーダー」に期待する特性が919種類に上るのに対し、現在のキャプテンが実際に持つとされる特性は635種類にとどまり、約300の差があることが示されている。これは個々のキャプテンの問題ではなく、ひとりに期待が集中する構造の限界を示している。
分散すると、チームは機能する
Mertens et al.(2021a)の知見として、チームがシェアド・リーダーシップへと移行するにつれ、チームの機能とパフォーマンスが改善したことが報告されている(出典)。同論文ではLeo et al.(2019)を引用し、単独のキャプテンによるリーダーシップ構造よりシェアド型のほうが効果的だとも述べられている。
エリート女性ラグビー選手を対象にした研究(出典)では、シェアド・リーダーシップへの支持が強いテーマとして浮かび上がるとともに、男女ではその好まれる形態が異なるという指摘もある。チームの特性に応じた設計が求められることが示唆されている。
指導者が設計できること:役割の分散と選考基準の見直し
キャプテン選考に関する研究では、ゲームへの深い洞察(タスクリーダー型の特性)に基づいて選ばれたキャプテンはリーダーとして高く評価され、動機づけや社会的能力に基づいて選ばれたキャプテンはチームに受容されやすかったことが示されている。「経験年数が長いから」「技術が高いから」という基準でキャプテンを選んでいないか、立ち止まって問い直す価値がある。
さらに、アスリートリーダーシップ開発の研究はリーダーシップの育成をキャプテン限定にせず、すべての選手に広げることの重要性を繰り返し強調している。
※ここからは編集部の推定・示唆です。具体的な設計としては、ウォームアップのリードを週替わりにする、戦術討議のファシリテーターを試合ごとに変える、オフ日の自主練計画を別の選手に任せる、といった形が考えられる。「全員がリーダー体験を積む」仕組みを意図的に組み込むことで、チームの自律性が高まる可能性がある。
キャプテンを頂点にしない強さへ
キャプテンというポジションを廃止することが目的ではない。目指すのは、特定の誰かの資質に依存しなくても機能するチームだ。研究が示す通り、リーダーシップはすでにチームの中に分散して存在している。指導者の仕事は、それを意図的な設計によって引き出すことではないか。特定の一人が倒れてもチームが揺らがない「組織としてのレジリエンス」は、そこから生まれる。
参考文献